写真家 松下直樹のオフィシャルサイト

  


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自転車のある風景
数年前に自転車を購入して以来、「自転車って、なんて素晴らしいアイテムなのだろう」と感じています。

自転車は確かに素晴らしいのですが、ただ自転車が素晴らしいというだけではなく、私がもっと感動したのは、
平均時速20km/h前後のスピードから私の目に飛び込んできた、その風景や町並みです。
健康のために始めた自転車ですが、ただ走るだけでは何だかもったいない気がして、
出かける際にはカメラを持参し、いつしか通りすがりの風景や町並みを撮影することに夢中になっていました。
特に、ランドナーと呼ばれるツーリング車とミニベロ(小径車)でのポタリングはカメラとの相性も抜群です。

元々、カメラで風景写真を撮ることが好きだった私は、これまでは古い町並みや里山風景を求めて、
車であちらこちらに走っていました。しかし、小さな移動に自転車を使うようになってから、これまでたくさんの物を見落としていたことに気付いたのです。

たとえば、今まで何気なく通り過ぎていた路地に入ると、所狭しと民家が建ち並び、
何となく周辺の生活感が伝わってきそうな景色が存在し、そして、すれ違う人がくれた「こんにちは」の言葉。
温かい人とのふれあいが、そこにはありました。
田園地帯を走ったならば、訪れるたびにその姿を変え、収穫前には黄金色に輝きを放つ稲穂があり、
さらには、それを見守る個性的な案山子が、人に変わって仕事をしているようにさえ見え、どこかおかしさすら感じられました。
湖には沈む夕陽が玉の光を映し出し、染まりゆく赤い空と相まって、なんとなくセンチメンタルな気持ちにさせてくれることも。

今こうやって自転車で走り、撮影した写真を眺めてみると、「山陰って温かくて素晴らしいところなんだな」と、
改めて感じています。だからこそ私にとって、「自転車は素晴らしいアイテム」だと言えるのです。
このように自転車で出かける際、偶然にもカメラを持ち出してからというもの、私にとってカメラと自転車はセットになってしまいました。
この偶然が私に感動を与えてくれ、さらには今まで気付かなかった物を教えてくれました。
気付くのが遅いのかどうかはわかりませんが、若い頃にはどうしても見つけられなかった「何か」をようやく見つけられたような気がして、今までの自分を少し恥ずかしく思うとともに、これからの人生にも少しワクワクしています。

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